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異国の地で、多くの現地採用の社員の暮らしを支えてきただけに、途方に暮れる彼らを見ると、職業観ばかりか、人生観すら揺らいだ。
労働時間の短縮か退職かの選択を迫る最後通告の日のことをN氏は、「生涯、忘れることはできない」と語る。
N氏は、この体験から、ある種の″使命感″を持ちはじめていた。「日本のインバウンド・ツーリズムは、一民間の努力だけでは報われない。
政府主導であってこそ、観光立国としての曙を見ることができる。だからこそ、リーディングカンパニーの一員として、必ずや成功させたい」という強い想いが、強く芽生えていた。
「生かされている」ことに感謝して、信念を持ってインバウンド・ツーリズムに取り組むことにしたのだ。自らに高い目標を課し、インバウンド・ツーリズムの事業化に一層の弾みをつけようと考え1人の犠牲者も出さずに、お客様全員を無事帰国の途につかせることができ、従業員家族の無事も確認して安堵したものの、社員は過労で倒れ、指揮をとるN氏自身も疲労の極みにあっえたのだ。
欧米人の心理をつかむ「アジアDMC&MICE構想」欧米からの観光客は、「チャイナ」という巨大な龍をひと目見たいと、海を越え大陸を渡ってアジアの地へやってくる。
日本に埋蔵する豊富な観光資源やサブカルチャーにいかに興味があっても、渡航者数で比較をすれば圧倒的に中国が優勢だ。
「日本はアジアの1つ」という位置づけが、観光という視点で欧米人から見た「日本」という国の一般的な見方である。
こうした心理を見逃さず、ビジネスの舞台を広く「アジア」と考たN氏は、年間150億円にも満たなかった事業部時代の取扱い実績を、設立後わずか1年で180億円にまで押し上げた。
今後は350億円にまで伸ばす覚悟で、社内には「マーケット戦略チーム」も新設した。新たな需要を創出するために、新規事業の開発や市場の拡大のためのリサーチにも取り組みはじめたのである。
そして、「何もビジネス・ステージを日本に限る必要はない。アジア全域を対象ととらえ、ときには日本を通過しても構わない。
そうしたカンパニーをめざそう」と考えるようになっていったのである。日本への誘致がいちばんの課題ではあるが、インバウンドビジネスの需要を創造していくことも重要だ。
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